日本語で声高に「内緒話」していませんか?

 日本人だけではありませんが、海外で会議に出ると、よく「内緒話」を自国語でしているのを耳にします。議論の内容の確認作業から、対処方針の相談、感想の共有に至るまで、内容は様々です。

 「日本語は特殊だからみんなわかんないだろう」と思っているのか、大きな声で「内緒話」をする日本人も少なくありません。

 日本語が、サブカルチャーを足がかりに広がりを見せているとは言え、まだ、「こんにちは」「ありがとう」以上の日本語ができる外国人は圧倒的に少ないので、こうした声高な内緒話は、実質的に「暗号」のような役割を果たしています。

 少なくとも、無意識のうちに私たちは、他国の人には分からないだろう、と推測して、そういう場面で日本語の内緒話を行っています。

 もちろん、国際的な集まりに出る日本人、みんながみんな英語が流暢ではありませんし、必ずしもその場で1人で意思決定ができるような権限を持たされているわけではありませんから、「ゴニョゴニョ」と「こちら側の話」をすることはあるでしょう。

 そんなときは自国語のほうが簡単です。私もそうです。

 このような「内緒話」は、議論を誤解なく進めるために、ある程度必要だと思います。

 しかし、特に議論の最中に行う「内緒話」では注意しておきたいことがあります。

 まず、相手を置き去りにして、自分たちだけで自国語で先に結論を出して、それを相手に伝えようとしてはいけません。自分たちだけで小田原評定をだらだらと始めてしまったりなんてこともよくありません。

 あくまで、自分たちだけの「確認作業」ですから、速やかに相手との議論に戻りましょう。いつまでも自国語の内輪話に興じていると、相手から能力や権限が疑われます。ましてや、声高に、ときに笑い声までまじりだすと、相手はどう思うでしょうか。

 そして、表情や声のトーン、その後の展開などから、話の内容は意外と正確に相手に理解されていると思っていたほうがいいでしょう。相手の悪口や文句、というのは、日本語であっても慎んだほうが身のためです。

悪口はわかるよ
体験談をひとつ。

 以前、世界銀行のラテンアメリカを担当する障害と開発チームと一緒に仕事をしたときのことです。彼らとは、ブラジルやメキシコなど中南米の国でセミナーなどを実施しました。当然、担当者もコンサルタントも皆、中南米の出身でした。

 世界銀行で働く以上、当然英語は堪能です。しかし、彼らの第一言語はスペイン語かブラジル人であればポルトガル語でした。

 ニカラグアでワークショップを開いたときのことです。マナグアのホリデイ・インというホテルで朝ごはんを食べていると、少し遠いテーブルにブラジル人の偉い人たちが座りました。

 こちらには気づかなかったようで、ポルトガル語で雑談をしているのが聞こえました。じきに、コスタリカ人のコンサルタントが現れ、彼らと同じテーブルに座りました。すると、彼らの会話はスペイン語に切り替わったのが分かりました。楽しそうです。

 自分の食事が終わったので、ちょっと挨拶と思って彼らのテーブルに立ち寄ると、ブラジル人のオフィサーが、「今ね」と笑いながらこちらを向いて、雑談の流れを簡単に英語で話してくれました。

 彼らの語学力、というか、言語を切り替えながら同じ話題を同じ調子で続ける能力に驚いていた(あまりに月並な感想ですね。。。)ら、微笑みながら口々にこう言われたのです。

「だって、話題を変えたら、何か悪いことを言っていたみたいに思われるじゃない」

 それまで「声高な内緒話」に無神経だった自分を恥じ入った出来事でした。





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