南アフリカに中古車を輸出する6つのステップ(2)

 前回は、南アフリカ政府が輸入してもいいよ、と言ってくれる中古車の種類について書きました。

南アフリカに中古車を輸出する6つのステップ(1)

 前回書き忘れたことがひとつあります。それは、ITACの寄贈車両に関する質問表では、寄贈される中古車は、「製造後10年以内」でないといけない、とされている点です。

 この点が、私のプロジェクトでもネックになりました。10年経っていないリフト車を寄贈してくれる団体さんや施設さんはなかなか、というか、まずありません。

 そこで、ITAC(南アフリカ国際貿易管理委員会)に相談してみました。最初は「10年」「10年」と連呼していたのですが、事情を話すと、最終的には、前回書いたように
  • 南ア基準に適合しているかどうかの審査は、ITACではなくて、NRCS(南アフリカ国家強制基準監督局)が行うから、そっちに行って聞いてみてほしい
という答えが返ってきました。

 あれ? あなたのガイドラインには太字でダメと書いてあったのに、例外があったんですね?

 なにはともあれ、NRCSがいいと言えばいいらしいです。結果から言うと、製造後14年の車を無事に輸入できました(今後、これダメだから捨てて、って言われる可能性はゼロではありませんが、常識的に考えてありえないでしょう)。

 車両登録とかを専門に請け負う業者さんとも話をしたのですが、トヨタとか日産とかいった日本のメーカーで、日本の車検をきちんとクリアしている車は、心配しなくていいと言っていました。そうでない、「これはスクラップですか?」とか、「どこから来たの?」とか言いたくなるような車が問題になるのだとか。

 …さて、今回のテーマです。

 ※改めてお断りしておきますが、以下は、私の経験(2016-17年段階の身体障害者用車両の寄付)に基づいたものです。中古車を南アフリカに輸出する際は、必ず、然るべきところに確かめながら手続きを進めてください。ルールはよく変わりますし、担当者によって運用が異なることも日常茶飯事です。
  1. 南アフリカでは中古車の輸入は原則認められていません
  2. 日本で必要な書類を整えましょう
  3. 南アフリカで書類を整えて、申請準備はいいですか?
  4. 申請にもいろんな段階があります
  5. 輸入許可が降りたら、さあ、日本を出港です
  6. 南アフリカに入港したら、終わり、ではありません

2. 日本で必要な書類を整えよう

 実際のところ、何が必要なのかは、その時々によって異なるようです。私の場合は、輸入許可の申請に際して、以下の書類が必要でした(と言っても、私が揃えたわけではなくて、ヒューマンケア協会さんが揃えてくださったのですが)。

  • 日本の車検証とその翻訳
  • 車両の譲渡証明書とその翻訳
  • 寄贈する旨を示すレター
(追記:2017.11.12)これらに加えて、写真が必要です。車両の写真もそうですが、リフトがついているとか、固定ベルトがあるとか、「すでに身体障害者用に改造されている車両」であることが分かる写真を撮りましょう。
(追記2:2017.11.12) 現地側の書類には、車体番号に加えてエンジン番号を記載する必要があります。車検証にはエンジン番号がないので、日本側で調べて教えてあげないといけません。
 
 車検証から見ていきましょう。
 
 まず、輸出入を管理するITACは「Copy of Registration for Roadworthy Purposes in Country of Origin」つまり、輸出側の国で路上を走るのに有効な登録証が必要であると言っています。車検証とは言っていません(南アフリカには車検制度がありません)が、車検証が該当するようです。

 当たり前といえば当たり前ですが、「もう日本じゃ走らないんだから」と廃車したり、車検を切らしたまま放置してはいけないということですね。廃車の手続は輸出直前に業者さんが行います。

 基準適合を審査するNRCSは「メーカーが南アフリカもしくはEEC、ECE法規に準拠している旨のレターを出すか、その旨が記された証明書」を求めています。


 最初これを読んだとき、いきなり心が折れそうになりました。日本でもメーカーに聞いてもらいましたが、もちろん、中古車の品質保証、それも輸出用のレターなんて書くはずはありません。

 仕方なく、NRCSに車検証の翻訳を見せて相談すると、「スペックが書いてあるんでしょ。それがほしい」と一言。ということで、案外あっさりと車検証の翻訳が通用しました。

泣きながら寝る人のイラスト(男性)
1人で悩まずに相手に相談すると、意外と解決法があります

 次に、車両の譲渡証明書です。


 これも、NRCSでは「購入の証明もしくは所有権の証明を、インボイス、船荷証券、航空運送状の形」で示すこととなっています。要は、盗品じゃないことを証明する趣旨のようです。

 しかし、私たちがいただいた車両は、無償で譲渡、それも普通に運転して持ってきているので、いずれの書類も示すことができません。そこで、所有者の住所や印鑑のある「譲渡証明書」を英訳することにしました。

 最後に、寄贈であることを示すレターですが、これは書式自由です。ただ、誰が誰に、何を何の目的で渡すかということと、商用・販売目的でないことを書くことが求められます。まあ、常識的なところです。

 ここまで、書類を揃えましたが、車検証と譲渡証明の翻訳は「certify」つまり認証されていないといけないとされています。「俺が翻訳しといたからさあ」では通用しないわけです。
凄い怒る人のイラスト(男性)
せっかく翻訳したのにいいい
日本の場合、大雑把に言って公文書は外務省、私文書は公証役場で認証されます。車検証自体は公文書にあたると推察されますが、翻訳した英文は公文書ではありません。なので、公証役場に行くのが正解のようです。

 しかし、認証、といっても「この翻訳は正しいです」という証明をしてくれるわけではありません。簡単に言うと「この文書の署名は、文書に書いてある名義人が確かにしましたよ」という証明をしてくれます。

 私たちの場合どうしたか、というと、翻訳してくださった方が「私がこれを誠実に翻訳しました」という内容の宣言文を英語で書いて、それを公証人の前で署名して、公証人が認証する、という形を取りました。その宣言文には、日本語原文と英訳が添付の形でひっつきます。

宣言書のサンプルがダウンロードできます(京橋公証役場)

 正直なところ、これが「正解」なのかどうかわかりません(翻訳そのものが認証されているわけではない)。もっといい方法があるのかもしれません。

 しかし、南アフリカ側も「certifyしろ」以上のことは求めていないので、本当のところは、よくわかりません。とにかく、これで輸入許可が降りたのは事実です。

 端折ったつもりですが、結構長くなりましたね。

 改めてこうやって書き起こしてみると、諦めずに先方の機関と交渉する、事情を説明してどうすればいいかを尋ねて、解決方法を探る、ということがとても大切ということが分かります。

 3.南アフリカ側で整える書類 に続く。こちらはそんなに面倒ではありません。

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