ムエタイがソウェトにやってきた(2019.02.19-20)

 だいぶ前の話になってしまいますが。。。

 それは、在プレトリア・タイ大使館からスリポーンへの一本の電話から始まりました。

 「アフリカのいくつかの国をムエタイチームが回って、ワークショップを開いている。ソウェトでもやりたいのだが、100人集められませんか」

 最初、大使館は別の場所を言ってきたのですが、こちらに馴染みのない場所でした。せっかくなので、ソウェトの北端にあるブラムフィッシャー・ヴィレ地区を提案しました。

 ここは、私たちが移送サービスの試行事業を手掛けようとしているところで、2011年の国勢調査では人口は約10万人。比較的新しく開発されているところで、ソウェトの人たちに言わせると貧しい地域だと言われています。実際のところ、ソウェトの他のところと比べてどうなんだろうか。

 タイ大使館の要求は結構難しく、南アフリカ政府が用意する人たちでなく、コミュニティーの人たちにムエタイを広めたというお願いをされました。ハウテン州の担当者を紹介すればいい感じになるかなと思っていたのですが、大使館側は手間ばかりかかる政府間のイベントよりも、コミュニティーへのタイ文化の普及を真面目に考えていました。

 これは大変だ、ということで、ソウェト自立生活センターの仲間たちに急遽諮って、協力を依頼。大使館の方には、ソウェト自立生活センターをパートナーとして位置づけてほしいことをお願いしました。
 かくして、バタバタではありますが、自立生活センターが他国の大使館と作る、地域に根ざした、インクルーシブで国際的なスポーツイベントに向けた1ヶ月の準備が始まったわけです。
 大使館は参事官がわざわざソウェトまで何度も足を運んで、自立生活センターとの調整、会場となったブラムフィッシャー多目的ホールや管理するヨハネスブルグ市スポーツ・レクリエーション局との協議などをこなしました。市当局との協議のときは、プレトリアから大使館の車をソウェトまでよこして、自立生活センターの代表たちを拾ってから市の中心部まで行く熱心さでした。

南アフリカでは3か所でムエタイ・ワークショップをしたそうです

 一方で、ソウェト自立生活センターは、地域の学校を訪問しての協力依頼、そして地域の人たちへの宣伝と人集めを行いました。1ヶ月で100人の参加者を、それも普段馴染みのないイベントに誘うのは難しいものです。しかし、これをやりきれば、きっとソウェト自立生活センターの評判も高まるし、私たちの事業もやりやすくなるでしょう。

他にも、ブラムフィッシャー・ヴィレ地区を担当する地区委員と大使館の橋渡しや、参加者を連れてくるバスの手配なども自立生活センターが行いました。

 しかし、この手のイベントの宿命でしょうか、とにかく前日まで人数が読めません。学校の反応はよかったのですが、最終的に応じてくれたのは中等学校1校のみ。でも、頑張って60名の生徒を連れてきてくれることになりました。

 残りは40名。近くに住むソウェト自立生活センターの利用者、家族、介助者も声をかけました。20名ぐらいが来てくれることに。

 あと20名? スタッフは前日の夕方に家に戻ると、それぞれ近所の人たちにおいでよと最後の呼びかけ。なんとか全部で120名ほどになりました。

 昼食を用意する大使館の方にはスタッフや関係者を含めて全部で160名のお弁当を用意してもらうよう連絡して、当日の朝を迎えました。

 さて、蓋を開けてみると。。。。

 中学生の子どもたちから、おじいさんおばあさんまで、障害のあるなしかかわらず、とにかく多くの人がいらっしゃいました。受付の列はなかなか終わりません。

この国は受付に時間がかかります

 少し遅れて始まったワークショップ。大使は別の用事でいらっしゃいませんでしたが、公使が出席。

バンコクの外務省本省からは、外務大臣アドバイザーの方が団長として、ムエタイ・チームに同行されていました。団長は、スリポーンを見て、「え?ソウェトで働いているの?」とびっくりしていました。タイ人が他の途上国の社会開発の現場で働いている事自体そんなに多くないのに、それも南アフリカで、車いすに乗った女性で、JICAの事業に関わっているときたら、当然びっくりするでしょうね。(っていうか、大使館は教えなかったんかい?)

他にも本省からは文化外交課長もいらしていました。課長は日本の有名大学で博士号を取得されたということで、日本語ペラペラでした。今度はこっちがびっくりでした。

タイ外務省、タイ大使館、トレーナー、ILCの代表で昼食
 開会式のムエタイ・チームのパフォーマンス(演舞とスパーリング)は、子どもたちに大受けで掛け声も飛んで大いに盛り上がりました。

子どもたちからの掛け声も飛び交うスパーリング
 開会式では、ソウェトILCにムエタイのトレーニングのための用具やTシャツ、ムエタイパンツが寄贈されました。Tシャツ、ムエタイパンツは参加してくれた子どもたちに後日配られました。

贈呈の模様
 昼ごはんは、タイ大使公邸料理人の作ったタイ料理のお弁当。生まれて初めてのタイ料理に最初はみんな恐る恐るの様子で、残さないかなと心配したのですが、完食してくれた子が多くてホッとしました。

大人たちは舌が保守的になっているのか、中にはブーブーいう人もいましたが。。。プレトリアで食えば、1000円ぐらい取られるような中身だと思うのだが。。。。(この辺のワークショップとメシの問題は別のところで書きます)

しかし、予想外の人出に用意した弁当は足りず、スタッフの一部はKFCに行くことに。。。

 トレーニングは、ボクササイズみたいな乗りでした。普段障害者「運動」しかしない人たちは、体を動かす運動に悲鳴を上げていました。たまにはいいでしょう。さすがに2日目は大人の数は減ったように思います。でも、子どもたちは楽しそうに集まっていました。

ホールを埋め尽くす子どもたち。お年寄りも横から見守る
ILCのピア・カウンセラーも初日は勢いが良かったのですが。。。
この大きなイベントを通して、ソウェト自立生活センターのスタッフたちはさらなる自信をつけたようです。海外の人や行政、学校など多様な人たちと一緒に一つのイベントを作る、というのは貴重な体験でした。


受付も大使館とILCのスタッフが一緒に行いました














 


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