3年ほど前に刑務所を訪問した話

2014年5月の話だが、刑務所(こちらではCorrectional Centre:矯正センターと呼びます)の、ファミリー・デーに行ったことがある。普段だと5分ぐらいの面会時間しか認められないそうだが、ファミリー・デーだと、朝8時から昼1時までの5時間ゆっくりと家族や友人と過ごせる。家族だけでなく、原則、誰でも会うことができる。

当時、プロジェクトに関わったばかりで、ピア・カウンセラーになる前のントンバナに誘われて、自分もヨハネスブルグ矯正センターに行った。日本でも行ったことがない場所だ。当然ながら、中の写真は撮影禁止だ。

この訪問は、ントンバナが障害受刑者と出会ったことがきっかけで行われた。身体障害を持つ受刑者は、定期的に近くにあるバラグアナス病院のリハビリテーション科に通ってリハビリを受けている。たまたま、ントンバナが受刑者が来ている日に病院に行き、そこで知り合ったとのこと。1人の男性受刑者に、自立生活プロジェクトについての資料を渡したところ、興味を持ってくれたので、是非会ってやってほしいと誘われたのだ。

さて、駐車場に車を止め、入り口に行くと、すでに家族や友人たちで刑務所はいっぱい。男性棟3棟、女性棟1棟あるのだが、入り口からそこまでは、当然、距離があって、堀や柵が設けられている。なので、訪問者は刑務所内のバスで移動するのだが、場所がわかっていれば徒歩で移動してもいい。高齢者や障害者は、別に刑務所のセダンが来て送迎してくれる。行きはセダンがちょうど来たので、セダンにントンバナと乗ったが、帰りは面倒だったので歩いた。歩いてみると大した距離ではない。

各棟は2重のフェンスと高い塀で囲まれていて、まあ、逃げられないのであろう。

棟の入り口に着くと、酒臭い刑務官がいて(その段階でダメな気がする)、ID(外国人の場合はパスポート)を預けることになっている。預ける際に、腕に番号を赤マジックで書き込まれる。中で、入れ替わってしまうのを防ぐためらしい。ントンバナは女性ということで、IDを預けなくてもよい、とのこと(なりすませないということか)。要は、「誰が入るか」はチェックされない日ということだ。

そして、差し入れ品の検査を通ると(携帯電話やカメラは当然持ち込み禁止)、売店があって、大行列。お菓子はそこで買える。折りたたみのレジャーチェアを持ってきて、準備万端という人もかなり目につく。

最後に、塀のなかに入るための扉で、また腕にスタンプを押された。

 扉をくぐると、そこは広い広い運動場。そこには、数えきれないほどの受刑者と家族・友人。さらには、臨時売店(肉・パン・ソフトドリンク)、ブラーイ(BBQ)の炭火、子どもが遊ぶ遊具、DJが揃っていて、酒以外はなんでもある感じだ。そして、みんな、思い思いに肉を焼いたり、おしゃべりしたり、と時間を過ごしていた。

 目指す男性受刑者は簡単に見つかった。話を聞くと、ソウェトで強盗に入り、警官と撃ち合いになって脊髄を損傷したとのこと。彼は資料もよく読み込んでいて、色々と質問された。おそらく、あのときのプロジェクトメンバーの誰よりも勉強していたに違いない。

 撃ち合いをしてしまったことから、刑期は10年以上。仮釈放を考慮しても、おそらく自分が南アにいる間に出てくることはないらしい。ちなみに、車いすを使うぐらいの障害者は2人部屋だそうだ。他はもちろん大部屋だ。ファミリー・デーの様子を見ていると、知的障害の受刑者と思しき人も何人か見かけた。

 「イージー・マネー」とこちらの人はよく言う。強盗や窃盗などの犯罪で、安易にお金を得ようとする行為のことだが、本当にイージーにそういう手段を取る人が多い。そして、その被害に遭って、障害をもつことになる人も多い。彼の場合は、逆にイージー・マネーを求めて自分が障害者になったわけだが、出所後はどういう人生を送るのだろうか。文字だらけの冊子を読んで、コメントができるぐらいの人なのだから、チャンスがあれば犯罪に走らずにすんだのではないかと思ったりもする。

 ントンバナから、彼の最近の様子を聞いた(規則上はダメだが、携帯電話を持っている人は結構多いらしい)。刑務所の中で、他の受刑者たちといろいろ活動をはじめて、テレビでも紹介されたとか。近々、ファミリー・デーがあると聞いたので、久しぶりに会いに行って、話を聞こうかと思っている。

 

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